風に吹かれて

掲載日:2013.06.13

大雪の後に低温が続き、出遅れた今年の春。でも気がつけば、柔らかな緑が溢れています。忙しかったですね、お疲れさま、春。

我が家の窓からは、大きなアカナラの並木が見えます。秋には紅葉が美しく、どっさりとなるドングリは子供達に大人気です。

室内から、まだ小さめで淡い緑の葉がふわふわと風にそよぐのを眺めていたら、今まで気がつかなかったものを発見しました。葉の間から、細い穂のようなものがたくさん垂れています。緑色でかすかに赤みがかって見えました。いっせいに風になびいて揺れています。

花でしょうか?確かに実がなるからには、花は咲いているのが道理ですが。気がついたのは初めて。しかも、こんなに早い季節に。まだ肌寒く、蜜蜂もいないけれど、大丈夫なのかしら?

早速、図鑑とネットで調べます。やはり花でした。そしてナラは蜜蜂が媒介して受粉するのではなく、花粉が風に乗って受粉する「風媒花」なのだそう。風の日に目立っていたのも納得です。

ナラの仲間だけでなく、松やイチョウ、ポプラなども風媒花だそうです。どれも、あらためて「花」を認識した記憶はありません。そのように、地味で目立たないのが風媒花の特徴らしいのです。

ライラックやアカシアは虫媒花です。美しい花やいい香り、甘い蜜などは、花粉を運んでくれる昆虫を呼ぶために、植物が用意したごほうび。花や蜜を作るために、植物には集中した初期投資が必要になりますが、ピンポイントで効率よく虫を惹きつけることが出来るようになります。

一方、風媒花はエサにつられることなく公平に吹く風に備えて、どっさりまんべんなく花粉を準備する物量作戦です。これも大変ですが、虫が不確定な環境や早い季節には有効そうです。それぞれの戦略は長い間うまく機能しているようです。

ナラの仲間は、フローリングや家具用の木材としてして使われてきました。堅いので磨くとすべすべになります。美しい木目は私も大好きでしたが、風に乗って生まれていたなんて。