イタヤ狐

掲載日:2017.02.25

探し物をしていたら、小さな箱を見つけました。少し汚れた紙の箱。何だったかな?開けてみると、懐かしい木のグッズでした。ほのぼのしながら、そっと出してみます。

昔、秋田県の角館(かくのだて)に旅行した時に見つけた、伝統のおもちゃです。

直径7㎝くらい、長さも同じくらいの短い丸太を縦に割ったいくつかを、ひもで束ねたもの。ほどくと、それぞれが小さな狐です。

中心から縦に割ってあって、私の持っているのは七分割。買った時のことを思い出しました。木が割れるなりゆきまかせなので、六分割や八分割のものもあって、あれこれ迷って買ったのでした。

縦に割った上の面の外側を、えぐるように削るとキツネの耳ができます。耳から顔をとがらせて、丸太の中心側のとがった部分の下側を削るといい具合にあごとおなかができます。ついたままの樹皮が背中です。塗装していない割った木の面の質感とよく合います。当然ですが。

割ったそれぞれのピースが、ユーモラスで表情のあるキツネにな
っています。

棚や家具の上に並べてみたり、かごや陶器の中にばらっと入れたり、木のインテリアにしても、いい雰囲気ですが、おもちゃとしてはどうでしょう?今時の小さい人には、素朴すぎるかな。

チームになっているので、お人形ごっこや、お芝居遊びができます。きっと昔は、おとうさんが子供のために、ありあわせの木で作ってあげたものなのでしょう。つまんで持ちやすい大きさと形が絶妙です。子供たちは両手に持って、夢中でお話をしながら遊んだことでしょう。

木目なりの形や色が、ひとつひとつの個性になっています。何だか悪役っぽいのや、顔がいい子や、しょぼいやつ、可憐な子もいるし、役者揃いです。

遊び終わって元どおり、丸太の形にそろえて結わえると、木目の凹凸がかみあいます。上から見ると、キツネたちが仲良く鼻先をくっつけあっています。

これに使われている木は、イタヤカエデ。イタヤ、とかメープルとか呼ばれて、私たちにもお馴染みの木です。固いのでフローリングによく使われてます。木目はほんのり、明るく少し赤みのある色合いが優しい印象です。