針江 生水(しょうず)の郷 1.川端(かばた)

掲載日:2019.10.29

フェリーで苫小牧から敦賀に渡り、車で琵琶湖周辺を巡る旅に出かけ、湖西の針江に行くことができました。

針江は十数年前から、生水(しょうず=湧水)の郷として知られるようになりました。

「家の外にも台所があって、湧き水が流れていてね(川端 かばた)。流しはふたつあって、上の方(壺池)は飲食用で、そこから溢れた水が次の流し(端池)で洗い物に使えるの。そこには鯉が飼ってあって、食べ物カスを食べてくれて、きれいになった水が敷地外の水路に流されるんだよ」。

そこに行った人の話を聞いて、外キッチンが大好きな私は、ぜひ行ってみたいと憧れていたのでした。

川端は個人の敷地内にあるので、住民のボランティアによるガイドツアーへ参加が必須です。有料ですが、そのお金は水辺の環境保全に使われます。

駐車場に車を停めると、その一角にも小さな湧き水。道沿いの大川は、昔は田の作業の船着場だったそうで、道から水面におりる石段がいい感じ。降りてみると透明な水ときれいな水草、小さな白い花が揺れる梅花藻(ばいかも)です。向こうに流れにじっと立ち魚を狙い続けているらしきアオサギが。期待感が全開です。

ガイドは年配の男性でした。小さな紙コップをもらって、まず駐車場の湧き水試飲です。柔らかな水の味。「塩素入ってないからね」。水道が引かれても、湧く水の方が美味しいから、と使い続けている家庭も多いそうです。

川端には、家の中にあるもの(内川端)と敷地内の別棟(外川端)があり、ツアーでは数軒の外川端を見せていただけました。

道路ぎわの水路に近く、瓦葺で妙に立派な物置だな、と思ったらそこが川端でした。3〜4畳の物置の床全体が水槽になっている感じです。片隅に湧き水の口があり上の流しが、地面より少し高いところにあります。流しが何段かになっていて、溢れながら流れ落ち、使い分けられて便利そうです。

最後の水槽にはたいてい、大きな鯉が泳いでいてびっくりしました。「鯉は食べるのですか?」というぶしつけな質問に「今はたいていペットでは」とのお答えでした。

水槽の上には、腰よりちょっと高いくらいのところには、間口いっぱいにしっかりした棚が渡してあって、ボールやザル、柄杓や鍋といった道具類が置かれ、使いよさそう。壁に小さな花入れが掛かっていたりして、使う人がこの場所を好きなのが伝わってきます。

昔お魚少年だったらしきガイドさんは、道を歩きながら詳しく水中の魚を教えてくれます。が、見慣れていない人たちには、ちっとも見えない!見分けられない!根気よく教えてくれる近所のお兄ちゃんと小さい子たち、のようでした。おかげさまで希少種もエビもサワガニも見えたのです。

彼は「魚つかみ」と言っていましたが、網や釣りではなく、まさに手で掴んでいたようです。「ぎゅっと掴んだらいかん、そおっとね。ずっと手を水に浸けていると、手が水の温度に冷たくなるから、それから静かに掴むんや」

ちなみに大川で、きらりきらりと光って見えたのは「鮎」。アオサギが狙っていた魚は、これでした。

「針江 生水(しょうず)の郷」次回に続きます。

針江 生水の郷公式ウェブサイト
http://harie-syozu.jp