魔法の風呂敷

掲載日:2021.09.10

ただいま私は実家の片付け中です。大きな家でもなく、資産家でもなく、由緒ある家柄でもないのに、なんとモノの多いことに驚き怒る日々。
先日は、和服の買取業者さんに来てもらいました。めぼしいものをお願いした引き上げ際のこと。ダンボールも台車も持っていないので、最初から買い取る気はないのかと心配でしたが。彼は、ささっとたたんだ風呂敷を取り出して広げ、和服を入れた紙包み(たとう紙)を重ねました。
その大きな風呂敷が緑色の唐草模様だったので、私はちょっと嬉しくなりました。床に座った彼の手元を、失礼ながら立ったまま見下ろしていると、おや、面白いことをしている。
たとう紙の包みは細長い長方形、それを正方形の風呂敷で包むには、長辺側の結びしろが足りなくなりそうでした。手品のような手の動きは、向かい合う角ではなく、隣り合うふたつの角を結び合わせたらしき。何と!そうか。
まず風呂敷を自分の前に角がダイヤ型になるように敷きます。その中心に横長にたとう紙を置きます。次に、風呂敷の前と後ろの角をそれぞれ左右の手で持ち、たとう紙の中心の上で交叉させます。交叉した端左右を、その下の角と結びます。左右ふたつの結び目ができて完成です。
魔法のように、対角線より長いものを包むことができます。しっかりと、しかも結び目ふたつが可愛らしく。
商売人らしくない口数少なめの彼は、ちょっと目を上げて、長いものを包むのに便利ですよ、と言って重い包みを下から抱え上げるようにして帰っていきました。
包み方を確認するのに、私は大きめのバンダナにティッシュ2箱を並べてやってみましたが、ぜひすぐお試しを。便利で楽しいです。細長いお弁当箱を包む時とか、長いフランスパンを裸で持ち歩きたくないパリの人とか(!^^)
実家片付けで、やたら出てくる昭和遺物のひとつが風呂敷。でも、厚地木綿の大判風呂敷は意外と使えます。そもそも丈夫な一枚布、リングや輪をつけて吊ればすぐ目隠しスクリーンやノレンに。テーブルクロスにも悪くありません。もとは実用品ですが、いまや日常の上質感です。