春遠からじ

掲載日:2014.02.25

今頃の季節、実家の父に電話をすると「今日は雪こわしをした」とよく言っていました。子は、年寄りが風邪をひいたり、腰を痛めたりしては厄介なので「そんなのほっとけば。ひと月もすれば勝手に消えるんだから」とか、愛想のないことを言っていたものです。

冬の間に固く締まった雪が少しゆるんだ頃、剣先スコップやらツルハシで、融け始めた部分をねらって崩していきます。雪割りと言うのが一般的かもしれませんが「雪こわし」と父は呼んでいました。「壊す」という臨場感に、嬉しい気持ちがよく出ているではないですか。

家の回りに始まって、車庫の前、家の前の道路と、日々少しずつ遠征していきます。冬の間の雪かきは苦労ですが、雪こわしは一種の娯楽だったようです。普通のサラリーマン家庭なのに、ツルハシやら長い重い鉄の棒やら、この仕事のためとしか思えない道具類が揃っていました。

雪こわしはもっぱら、おとうさんとおじいさんの楽しみですが、子供時代の私が大好きだったのは「ダム遊び」です。

雪解け水を、地面の氷や土を掘って小さな水路を作って流してやるのです。うまく流れるように溝の深さや巾を調整してやったり、ところどころ溜め池やダムを作ったり、溢れそうになるとバイパスして、また合流させ。

子供達は夢中でしたが、母親には不評な遊びでした。服も手袋も長靴もびしょびしょ、どろどろ‥。

子供のやることで、水路は計画性なく伸びていきます。遊びが終わって家に入った時にはたまたま、玄関前に溜め池が出来ていたり。大きな水路から、隣家の敷地に快調に水が流れ込んでいたり。

治水事業の才能のある子がいたら、それぞれの家のまわりの水をうまく下水に流し、あるいは家庭菜園に水を導き、さらには、おじいさん雪こわし隊と連携して効率を高め、近所から喜ばれたりしたかもしれませんが(!^o^)

どこかで春がうまれてる♪どこかで水が流れだす♪
(作詞:百田宗治 作曲:草川信)