はる

掲載日:2014.03.14

読み方は同じですが、建築の用語では「張る」と「貼る」は区別して使われます。最近のパソコンの図面では、おまかせ変換でそれほど気にしないことも多いようですが。

釘ではるのが「張る」、糊ではるのが「貼る」なんて教えられました。しかし、その材料がどう施工されるのかもわからない新人時代には、図面に書くたびに悩んだものです。

木の板は「張る」、ビニールクロスは「貼る」と言えばわかりやすいでしょうか。力をかけて、ぴんと張るのが「張る」、接着剤などでくっつけるのが「貼る」。

でも、フローリングをはる時に接着剤も使ってたよなあ、とかクロスだってピンとして欲しいし。障子紙は糊ではるのに何で「張り」なんだ?と若き悩みは尽きないのでした。やがて、何度も図面に書き入れ、それぞれの材料について知識が出来、施工の現場を見ているうちに何となく納得していきました。

材料の性質を生かしながら、施工方法に物理的な力を要する度合いが高いのが「張る」、糊などを媒介にして別々のものを一緒にするのが「貼る」ということでしょうか。

構造材としてはもちろんですが、木の内外装には穏やかな緊張感が感じられるのは、「張る」仕事のおかげもありそうです。

悩んだ日々のおかげで、今や自分の中では、建築材料以外のものもそれで区別してるらしく。氷は張る、コピペは貼る、湿布は貼る、肩は張る、見栄は張る、お肌に欲しいのは張り、いやこうなっては貼るマスク型のパックか?

口に出すとアクセントは違いますが「春」も語源的に同じ、という説もあるそうです。草木の芽に、力がみなぎって「張る」季節だからです。