フキノトウの戦略

掲載日:2020.04.10

新型コロナウィルスで止むを得ず引きこもり中の人間も、せめて戸外を散歩しやすい季節になったのが有難い。不要不急ではありますが。

家の周りを歩きます。今日は通路と花壇の花の間に出ていたフキノトウをどっさり持ち帰りました。洗って、花を上にしてボールに一面に入れてみました。淡い黄緑色の葉(苞 ほう)に包まれて、少し頭を出したクリーム色や白っぽい花が可愛らしい。

苞からのびた丸いドーム状の薄黄色の花(花1)、それはまた小指の先より小さな花(花2)のかたまりで、その小さなやつをじっと見るとさらに極小のもしゃもしゃしたもの(花3)から出来
ているようです。

さらに眺めていると、もしゃもしゃ(花3)には2種類あり。先端が星のような5弁の花の形のと、細い毛束状のと。おや、フキノトウには雄花と雌花があるのかしら?

調べてみると、フキは雌雄異株なのでした。星型の花のが雄花、細い毛束状のが雌花だそうです。

ライバルの花がまだない春一番、昆虫を呼んで花粉を運んでもらうのがフキの作戦です。受粉して種ができると綿毛が開いて、風が種を運びます。種が旅立って役目を終えた雌株が枯れた後から(雄株はすでに枯れている)、フキの葉が現れて、その茎が美味しく食べている山菜のフキ。葉より花が先行なのです。

極小の花の秘密を観察しながら、ボールに顔をすり寄せていたら、ふんわりとフキノトウの花の香りが漂ってきました。ほろ苦い山菜っぽい香りではなく。ちょっと古風で懐かしい?サロンパス?面白い匂いです。フキノトウの「花」の香り、お試し下さい。

フキはライバルのない早期に、多重構造の花で大量に種を作り、綿毛飛行で広く新天地に広がるうえに、土の中にも地下茎を延ばして、支店を作りながら拡大する強力な繁殖作戦なのです。

そういう訳でフキは、ほぼ滅びることはないような。家のまわりでは邪魔者扱いされることも多いですが、丈夫で大きな葉は手っ取り早いガーデニング素材に使うことも出来そう。ちなみに我が家では、敷地の隅に露出している無粋な黒い塩ビの排水管の目隠しとして、野趣あふれる修景効果を発揮してくれます。