ハキダメギク

掲載日:2020.08.26

草取りが好きです。地面に座り込んで、鎌を片手にぽちぽちと、一人で無心に草を抜いていると安らぎます。

家族には趣味が草取りってビンボくさいから、人にはガーデニングと言ってくれと言われてますが。強いていうなら「雑草観察」でしょうか。自然観察の一種かな(!^^)

様々な雑草が微妙な勢力バランスをとりながら、北国の短い季節のうちに次々と登場する面白さ。お金もかからず、気が向いた時に好きなだけすればよい。何より、家のまわりがこざっぱりする成果があります。

暑さが少し落ち着いて、家庭菜園のまわりのお手入れです。おや、お久しぶり。小さな白い花がついた丈の低い草。へりがギザギザの葉もミニチュアぽくちっちゃい〜

小さな花は直径4㎜足らず、黄色い丸い芯を、短い白い花びら5枚が囲んだお花型です。さらに目を凝らすと、白い花びらの先は三つに分かれている(子供が書くチューリップの花の形みたいな)細かさです。小さな妖精が耳の後ろにさすとちょうどいいかも。

初めて見た時、我が家の出来立ての菜園は、土が栄養不足で雑草も小さいのかと思っていました。しかし、近所のベテランの畑にも、やはりその草がありました。花と葉は同じように小さいのですが、茎が放射状に広がって一株が大きく、リッチではありましたが。おお、でかいと驚いていると、ベテランは上から鷲掴みに抜いて、あっさりと捨てました。

「掃溜菊 ハキダメギク」というのが、この雑草の名前です。よく目立たない小さな花は、可憐とか清楚とか、悪くても慎ましやか健気とかいうふうに表現されますが。あまりに小さいのでひねりがきかず、率直な名前をつけられてしまったようです。

命名は日本の植物学の父、牧野富太郎先生。大正期に世田谷区の掃き溜めに生えていたので、だそうです。先生、ひどい〜

ちなみに、掃き溜めとは都市のゴミ収集が行われていなかった昔、ゴミや壊れた不用品などを捨てていた場所です。私の記憶にある昭和のそこでは、よくカボチャなども生え、花が咲いたりしていました。

しかし、図鑑の説明によると、この草はイギリスの世界遺産キューガーデンにも生えていて、「キューの草」として19世紀から知られているのだそうです。何だか権威ある豪華そうな呼び名ではありませんか。邸宅の美しいイングリッシュガーデンでも、貴族の奥様が「あら、キューの草が」とかつぶやいて、わしっと抜いているのでしょうか。